突如として現われた道教のお宮

圏央道の坂戸インターチェンジを降り、しばらくのどかな道を進むと突如として豪華絢爛な黄色の屋根瓦の寺院と思わしき建築群が忽然と姿を現しました。一瞬日本であることを疑ってしまうような光景でした。ここは「聖天宮(せいてんきゅう)」と呼ばれる中国台湾三大宗教(道教・儒教・仏教)の一つ「道教」のお宮でした。

広場から聖天宮を望む

龍をいただく門

駐車場に車を停め、広場の前に広がる天門の屋根には左右対になった数多くの龍の造りが見られ、訪れた観光客の目を惹いていました。入口で拝観料(500円/大人)を支払い、天門をくぐり前庭に出ると目の前に天門より大きな黄色の屋根瓦の前殿が広がっており、その左右には八角形の三段屋根の塔楼が建っていました。東西の塔楼には登ることができます。東側は鐘楼と西側は鼓楼です。その名の通り、鐘楼の3階部分には鐘が、鼓楼の3階部分には太鼓が有り、午後の3時になると鐘・鼓が鳴ります。

前殿と塔楼

見事に彫られた2本の柱

前殿の正面に2本の太い柱が有り、これは九龍柱と言って台湾の「観音山」で取れた高さ5mもある「観音石」を日本に持ってきて、9頭の龍の彫刻を施したとのことです。

九龍柱

本殿に祀られる神様

前殿をくぐり、中庭に進むといよいよ本殿が見えました。本殿にはガイドの方がいて本殿内の構造について説明してくれました。話によると本殿中央奥には道教最高位の三清道祖(元始天尊、道徳天尊、霊寶天尊)が祀られており、中央前方には4体の四聖大元帥、右奥には生を司る南斗聖君、左には死を司る北斗聖君が祀られていました。建造物に目を移すと高い本殿天井には螺旋状の渦を巻いた太極天井という名の華やかな装飾を施した造りが目を惹きました。これは全ての始まり、宇宙の始まりを表現しているとのことでした。

本殿
本殿の中央に祀られる三清道祖
螺旋状の太極天井

ここ聖天宮では、本場台湾の参拝体験ができます。まず祈願には日本よりも何倍も長いお線香を焚き、願いを託します。またおみくじは表と裏に「陰」と「陽」を表した「神拝」と言う2つの木片を投げ、その組み合わせで運勢の吉凶を占う方法で行います。もちろん日本と同じく、御守も有りますが、なんと366通りもあるとのことです。

意外なお土産も

客庁という祈祷待合室には自動販売機が有り、台湾のお菓子、お茶、清涼飲料が売られていました。自動販売機にはキーホルダーやカンバッジ、しおり等も有りました。店員のいる売店は無く、祈祷の物以外で売られているのはこの自動販売機だけです。

台湾のお土産が売られている自動販売機

様々なイベントを開催

帰宅していろいろと調べてみると、聖天宮では「西遊記」等のTVドラマや戦隊モノの撮影スポットになっていて、更にはアイドルの写真集の撮影やミュージックビデオのPV撮影に使われているのには驚きました。

毎週土曜日朝には天門前の広場で太極拳やなんとコスプレ撮影会も随時受付しているとのことでした。さすがに神社だけにへそ出し禁止や男性の女装禁止などのルールがあるようです。

道教のお宮は日本の寺院と違って死者を祀るものでは無く、人々が祈願するための場所なので、全体的にきらびやかな装飾・明るい色使いが特長です。まさか日本にこのような場所があるとは知りませんでした。

開祖が不治の病を患い、「三清道祖」へ縁起をもたれたのを期に一命をとりとめ、完治されたご利益にあやかってお宮を建てようと建造の地を探していたところ、生まれの台湾でなく、日本にお告げを授かったのがきっかけとのことです。昭和56年から着工し、台湾から一流大工を呼んで、15年の長い歳月を掛け、ついに平成7年に開廟したのがここ聖天宮です。

この日はあいにくの雨でしたが、思いがけず台湾の異文化を体験することができる貴重なお薦めの場所です。